緊急事態宣言も全解除され、世の楽器吹きにもようやく光明が差してきた気分がしますよね。

 一般吹奏楽団員としてはまだ、すべて解決には程遠いですが。
 防音の練習室(狭い密室空間)に、たくさんの団員が集まって、長時間のあいだ息を吹き出すという、某知事もびっくりの密っぷり。唾液の接触もあるでしょうからね~。接触感染が防ぎきれない活動の一つですよね。
 うちの団は年配の方も多いので、仕事で不特定多数の人と会う自分としては、活動再開よかったね!とはならない気持ちです。
 完全に元に戻るのはいつになることやら。息の使い方も忘れていそうで、再開が楽しみでもあり恐ろしくもあります。息も絶え絶えで吹くんだろうなぁ……


 自粛もここまで長いと、楽器吹けない禁断症状なのか、YouTubeなどの動画サイトでクラリネット動画を観ることが増えてきます。 見る側の人間にとってありがたいのは、自粛中の演奏家の方々が演奏やレッスンの動画をあげてくださっていること。
 そんな動画を観ながら、ふと「クラリネットらしい”ねいろ”」とは何だろうと考え直す機会があったので、そのことについて考えてみたいと思います。


☆クラリネットの音のイメージ
 一言にクラリネットの音、と言っても人によってイメージする音色は様々なのではないでしょうか。
木のぬくもりを感じるような牧歌的な音色から、明るく華やかな音色。ジャズで聴くスモーキーでハスキーな音色だったり、中東の民族的な音色など、私が思いつくだけでもこれだけあります。世の中にはもっといろいろなクラリネットの音があることでしょう。
 いざ演奏する、となるとただ楽器に息を吹き込んでリードを振動させた音が『音色』なのではなく、ちゃんと鳴らしたい音のイメージを想像して、それを目標に音色をつくることになるわけです。

☆どんな音色が一番クラリネットらしいのか?
 ここからはかなり個人的な意見になります。なので、「こういう風に考える人もいるんだな」くらいに捉えていただけるとありがたいです。
 振り返れば中学や高校時代、 今よりもずっと情報を得るのが大変だった時代ですが、私はクラリネットの音についてそれ程明確なイメージを持って吹いていませんでした。レッスンで来る先生の音になんとか近づけようとは頑張っていた気がしますが、今思えばリードの選択もガバガバだったし、先生の音のどこが素敵だと感じて近づけようと思っていたのかも説明できませんでした。
 それと比較して、今はたくさんの「本物のクラリネットの音色」のサンプルが比較的手軽に入手できる時代になりました。プロからアマチュアの方まで、たくさんの方が動画サイトに演奏をアップロードしていますしね。

 大人になって、クラリネットをまた吹くようになってしばらく、「クラリネットの好きな音色って、木でできた楽器特有の、丸くって暖かい音色だよな!」と思うようになりました。表現として適切かは置いといて、牧歌的な感じ。
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 そう思うと、響きがダークで落ち着いた音がとても良いように聞こえてくるわけです。
 Youtubeで動画を上げているアマチュア・セミプロの方で、日本人の視聴者の方から「上手い」と評価されているプレイヤーさんの中には、このタイプの響きを大切にしている方が多くいらっしゃるように感じます。まさに「日本人好みの音」なんだと思います。
 確かにクラリネットにしか出せない音色ですもんね。私もこの音色があるからクラリネットは素晴らしいと感じますし!

 ただ、たくさんの時間をかけていろいろなプロ・アマのプレイヤー方々の演奏を聴くにつれて、徹頭徹尾「暖かい音色」で吹くことが果たしてクラリネットの音色として正しいのだろうか、という疑問がわいてきました。
 例えば控えめな前奏から徐々にクライマックスへ盛り上げていく曲があったとして、前奏も盛り上がる部分も同じようにダークで落ち着いた音色で吹いたなら、それは本当にクラリネットの音色を選ぶうえで適切(という表現しか思いつかない^^;)なのだろうか。なんとなく抑揚のない凡庸な音楽になっていないだろうか。
 そう考えるようになると、自分が好きな音色とそれがその曲の雰囲気と合っているかどうかって、ほとんど関係のない事なんだろうなって思うようになってきました。

 音色の使い分けと盛り上がりの関係が如実にわかるのは、実はネット上にたくさんの動画が上げられているポップスの演奏動画なんだと思います。曲のダイナミクスって、音量やテンポだけじゃなくて、音色も考えて作らないとうまく伝わらないんだろうなって、すごく感じます。
 私はダークな音色が好きで、輪郭がくっきりして底抜けに明るい音色は苦手だったんだけど、それは音の処理や響かせ方さえ丁寧に作ればれっきとした大事なクラリネットの音色の一つなんだと、最近考えを改めるようになりました。
 もちろん、終始明るく吹くことがいいわけではない。逆も同じということです。

 今やコロナの影響でか、世界のトッププロもクラシックだけでなくもっと親しみやすい曲を演奏動画として投稿してくださってます。
 こんなこと言うのは烏滸がましいことは承知で書くと、同じアマチュアクラリネット吹きの方々に、そんな方々の演奏をたくさん聴いてほしいなぁと強く思ったので、今回の文章を投稿しました。
 最近は全く音を出せていないので、ロングトーンですら怪しい状態な自分ですが、基礎固めをしたうえで、たくさんの音色を自在に操れるプレイヤーを目指して練習していきたいですね!

 こんなことをつらつら書きましたが、もちろん牧歌的な暖かい音が一番好きなのは、変わりませんけどね!(*'ω'*)